師走の空気と、変わってきた働き方
師走に入り、サロンも一気に慌ただしい空気になってきました。
とはいえ、昔と比べると “ぎゅうぎゅうに予約を詰め込む” ことはしなくなりました。
若い頃は「できるだけ多くのお客様をきれいにしてあげたい」という気持ちもあり、体力にも自信がありました。
年末はまるで戦場のようなスケジュールを組んでいたのを思い出します。
今でも気持ちは変わりませんが、年齢と経験を重ねると、少し考え方が変わってきました。
丁寧にできる範囲を守るという選択
無理をして体調を崩せば、結局お客様に迷惑をかけてしまう。
“命の生活に関わるケア” だからこそ、余白を持って丁寧に向き合うことが、犬にとっても自分にとってもいちばん優しい形だと感じています。
増える求人問い合わせと、現実的な理由
この時期になると、ありがたいことに求人の問い合わせが増えます。
「見習いとして働きたいです」
「シャンプーならできます」
そんなふうに言ってくださる方も多いのですが、率直に言えば、今の料金設定ではスタッフを雇えるほどの余裕はありません。
料金を上げれば解決するわけではない理由
地域性、家計とのバランス、そして“命を商品扱いしない”という当店のスタンス。
これらを踏まえると、無理に単価を上げてしまうのは本意ではありません。
簡単に説明できないのですが、結局は「ごめんなさい」とお断りすることになります。
軽く見られがちな“ベイジング”の本当の価値
求人の話の中で、毎年感じることがあります。
「シャンプーならできます」という言葉の違和感
シャンプーやドライを“軽作業”だと思っている人が、とても多いということです。
グルーミングは「カット」が注目されやすいため、派手な部分だけが“仕事の中心”だと勘違いされがちです。
しかし実際は、カットの前の工程こそがすべての土台になります。
仕上がりを決めるのは、カットの前の工程
シャンプー方法
皮膚の観察
被毛の扱い方
乾かし方
コームの入れ方
手の温度
水分の抜き方
犬の体勢や負担の抑え方
こうした “見えない作業” を丁寧に積み上げていくことで、初めてカットが活きます。
ベイジングを甘く見ると、どれだけカットが上手くても仕上がりに限界が出ます。
逆に、ベイジングが完璧なら、派手な技術がなくても犬は美しく整います。
だから私はずっと、
「ベイジングこそグルーミングの中心」
と言い続けています。
今の師走の働き方が好きだと思える理由
忙しい時期ではありますが、今の“詰め込まないスタイル”が気に入っています。
一頭一頭と向き合う時間の大切さ
一本一本の被毛に手を入れながら、その子の生活や家族との時間を想像する。
そうした瞬間が積み重なって、グルーマーとしての時間は成り立っています。
最後に:静かに丁寧に一年を締めくくる
年末は、犬たちとその家族の一年の締めくくりをそっと支える時期。
変わらない丁寧さで、今年も静かに、淡々と、いつものようにサロンに立っています。