― 繁殖と迎え方を、もう一度考える ―
年末の慌ただしい時期ですね。
クリスマスを前に、犬や猫の仔が大きく動く季節でもあります。
小さいこと、珍しい掛け合わせ、珍しい毛色。
最近では「特別に大きい」といった特徴まで、
仔犬・仔猫の“今だけのレアさ”が価値として並べられています。
正直、
「何を目的に、この繁殖が行われたのだろう?」
そう感じる場面に出会うことが増えました。
びっくりするような掛け合わせ、
派手な売り文句。
それらが「多様性」という言葉で包まれ、
いつの間にか“何でもあり”になってはいないでしょうか。
でも、本当に考えるべきなのは、
その子が成犬・成猫になったときの姿です。
どれだけ自立できるのか。
どんな性格で、どんな暮らしを送り、
人とどんな関係性を築けるのか。
ヒトの子どもと同じで、
生まれた瞬間の可愛さだけでなく、
成長し、社会の中で生きていく力を
どう育てていくのかという視点が必要だと思っています。
ネットや実店舗で、
華々しく並べられている子たちを見ると、
胸の奥に、言葉にしにくい違和感が残ります。
業界側も、飼い主側も、考える時期
今から先のことを考えると、
この問題は「業界が悪い」「飼い主が悪い」という話ではありません。
業界側も、飼い主側も、
どちらも立ち止まって考える必要がある問題だと感じています。
繁殖者が
「なぜこの繁殖をするのか」
「この命の先に、どんな生活があるのか」を考えること。
そして飼い主になる側も、
「今かわいいか」「珍しいか」だけでなく、
10年後、15年後の暮らしまで想像して迎えること。
どちらか一方だけが正しくても、
もう一方が追いつかなければ、
その歪みを受け止めるのは、結局、犬や猫です。
いま、考えてほしい3つのこと
ここで、特に考えてほしいことを
3つだけ挙げたいと思います。
① なぜ、この繁殖なのか
珍しさや流行ではなく、
その犬種・猫種として健全なのか。
将来を見据えた理由があるのか。
繁殖は「作ること」ではなく、
次の世代を預かる行為だと思っています。
② 成長した姿を想像しているか
仔犬・仔猫の時期は、ほんの一瞬です。
成犬・成猫になったときのサイズ、性格、運動量、ケア。
それを理解した上で迎える準備ができているか。
そこまで含めて「迎える」という選択だと思います。
③ 困ったとき、相談できる相手はいるか
ブリーダー、ショップ、サロン、病院。
何かあったときに相談できる“人”がいるかどうか。
命と暮らす上で、
一人で抱え込まない仕組みはとても大切です。
これから迎える方へ
35年以上、この業界に身を置いてきました。
正直に言えば、
自分自身も完璧だったとは思っていません。
できていなかったこと、
もっと考えるべきだったこと、
今だからこそ反省できることもあります。
だからこそ、声を大にして断定したいわけではありません。
ただ、
「迎えた命と、最後まで一緒に生きる」
その覚悟だけは、
どんな時代でも変わらないものだと思っています。
かわいいから。
珍しいから。
流行っているから。
その先にある10年、15年の暮らしまで、
ほんの少し立ち止まって考えてもらえたら。
それは、
犬や猫のためでもあり、
迎える人自身の人生のためでもあるはずです。