熊本地震を経験して考えた犬猫の防災|ケージ・キャリーに慣らしておく意味

熊本地震を経験して考えた犬猫の防災|ケージ・キャリーに慣らしておく意味

2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震。

熊本県八代市にあるDog Salon ぴあ〜のも被災しました。

幸い、家族も犬猫たちも無事でしたが、サロン内では物の落下や破損があり、その後は断水によって通常営業ができない期間も続きました。

地震から少し時間が経ち、片付けや営業再開を進める中で、改めて強く思っていることがあります。

ウチが、ケージフリーで犬を管理していなくてよかった。

そして、

犬も猫も、普段からケージやキャリー、リードなど「人が安全に管理できる方法」に慣らしておくことは、とても大切だ

ということです。

これは「ケージフリーはダメ」という話ではありません。

犬猫の防災を考える時、

「ケージに入れるのはかわいそう」

「自由にしてあげた方が幸せ」

という人間側の感情だけではなく、

大きな地震が起き、人間自身が動けなくなった時に、その子の命をどう守るのか。

そこまで含めて考えてみませんか、という話です。

目次

Dog Salon ぴあ〜のがケージフリー管理をしていない理由

Dog Salon ぴあ〜のでは、お預かりした犬たちを常時自由に歩かせる、いわゆるケージフリー方式での管理は行っていません。

基本は個別管理です。

そのうえで、おおよそ4時間ごとを目安に、運動や排泄、状態確認などの時間を取っています。

もちろん、ずっと狭い場所に閉じ込めているという意味ではありません。

休む時間と動く時間を分けながら、その子の年齢、性格、体調なども見ながら管理しています。

この方法は今回の熊本地震があったから始めたものではなく、以前から続けてきたサロンの管理方法です。

ただ今回、本当に大きな地震を経験して、

この管理方法でよかった

と改めて思いました。

もし地震の瞬間、犬たちが自由に動き回っていたら

今回、幸いにもサロンの建物は残りました。

Dog Salon ぴあ〜のは、外から店内の犬たちを眺められるような大きなガラス面を設けた造りではなく、大きなガラス窓もありません。

結果的には、それもよかったと思います。

でも、

「ウチの建物なら地震でも大丈夫だった」

とは思っていません。

今回は大丈夫だっただけです。

もし大きなガラス窓が割れていたら。

扉や壁、柱が歪んで隙間ができていたら。

棚やグルーミング用品が倒れていたら。

そこに自由に動き回っている犬が何頭もいたら。

逃走していたかもしれません。

倒れてきた物の下敷きになっていたかもしれません。

恐怖でパニックになり、犬同士の事故が起きた可能性もあります。

自分の犬であっても考えたくないことです。

ましてや、サロンでお預かりしている大切なお客様の犬だったら。

考えるだけでも怖くなります。

犬や猫の事故は「弁償」で元には戻せない

店舗で犬を預かる以上、保険や補償などについて備えておくことも事業者として必要です。

しかし、犬や猫は物ではありません。

もし地震で逃走してしまったら。

交通事故に遭ってしまったら。

大きなケガをしてしまったら。

命を失ってしまったら。

金銭的な補償をしたとしても、その子は元には戻りません。

だからこそ、

事故が起きてからどう補償するか以上に、事故が起きにくい管理環境を平常時から作っておくこと。

それがサロンとして非常に大切だと考えています。

震度6強では「地震が起きたら犬を助ければいい」ができないこともある

今回の令和8年熊本地震は、2026年7月28日16時27分ごろに発生しました。

気象庁によると、マグニチュード7.1、最大震度7。

八代市でも千丁町と鏡町で震度6強、平山新町で震度6弱が観測されています。

自分がいた場所そのものが何震度だったのかは分かりません。

ただ、体感では「ここも震度7だったんじゃないか」と思ってしまうほどの揺れでした。

地震への備えについて調べると、

「揺れたら出口を確保しましょう」

「ペットを安全な場所へ」

など、さまざまな行動が紹介されています。

もちろん、できる状況なら大切なことです。

ただ、気象庁が示している震度6強の状況は、

立っていることができず、はわないと動くことができないこともあるほどの揺れ

です。

今回、自分も実際にそれを経験しました。

地震の瞬間の記憶は、ところどころしかありません。

立って犬を捕まえて、

必要な物を持って、

出口を確保して、

安全な場所へ移動する。

文章にすると簡単ですが、あの揺れの中ではそんなことはできませんでした。

だから思います。

「地震が起きたら人間が助ければいい」という前提だけで防災を考えない方がいい。

人間が何もできない数十秒でも、その子が少しでも安全でいられる環境を作っておく。

それこそが平常時にできる防災ではないでしょうか。

地震は「揺れるだけ」ではなく、地面そのものが動く

今回の熊本地震で、もう一つ改めて認識したことがあります。

地震は、単に建物が揺れるだけではありません。

国土地理院が公表した令和8年熊本地震に伴う地殻変動の解析では、八代市の電子基準点「千丁」で、

北東方向へ約87cmの変動、約33cmの沈降

が確認されています。

出典:国土地理院「令和8年熊本地震に伴う地殻変動(第3報)」

87cm。

33cm。

実際の数字を見ると、その大きさに驚きます。

つまり、建物だけが動いているのではなく、地面そのものが大きく変動しています。

もちろん、建物の耐震化は重要です。

家具や設備の転倒防止も必要です。

ウチも東日本大震災や10年前の熊本地震などをきっかけに、落下・転倒防止には取り組んできました。

それでも今回、被害は出ました。

建物が倒壊しなかったとしても、

扉が歪む。

壁に隙間ができる。

窓が割れる。

家具や機材が移動する。

そうしたことは起こり得ます。

その時に犬や猫が自由に動き回っているのか。

それとも、ある程度守られた場所にいるのか。

災害時には大きな違いになると思います。

「ケージに入れる=かわいそう」ではなく、ケージを嫌な場所にしない

ここは誤解してほしくないところです。

犬を長時間ずっと狭いケージに閉じ込めましょう、という話ではありません。

自分が大切だと思っているのは、

ケージやクレート、キャリーに入ること自体を、その子にとって嫌な経験にしないこと

です。

普段からケージに入る。

中で休む。

眠る。

おやつを食べる。

扉が閉まっても落ち着いていられる。

こういう経験を少しずつ積ませておけばいい。

環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」でも、飼い主が平常時から行う対策として、犬や猫をケージやキャリーバッグなどに慣らしておくことが示されています。

出典:環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」

これは災害時だけに役立つものではありません。

動物病院への通院。

入院。

車などでの移動。

ペットホテルや一時預かり。

体調不良で安静が必要な時。

さまざまな場面で使える力です。

ケージやキャリーで落ち着いて過ごせることは、その子から自由を奪うためではなく、その子を守れる選択肢を増やすためのもの。

自分はそう考えています。

猫もキャリーやリードに普段から慣らしておく

今回もう一つ、

「やっておいてよかった」

と思ったのが猫たちです。

ウチでは猫も、人が管理できるようリードなどに慣れてもらっています。

ただし、災害時に猫をリードだけで管理すればいいという意味ではありません。

猫は恐怖やパニックによって、普段とはまったく違う行動をすることがあります。

だから、

キャリーに入れる。

ケージに入れる。

ハーネスやリードも使える。

身体を安全に触らせてくれる。

そうした方法を一つではなく、いくつか持っておく。

選択肢が多いことが、非常時の安全につながります。

犬猫の防災は「備蓄」だけではありません

ペットの防災というと、

  • フード
  • 常備薬
  • ペットシーツ
  • リード
  • キャリー
  • 非常用持ち出し袋

などを思い浮かべる方が多いと思います。

もちろん、どれも必要です。

今回、八代市で実際に断水を経験した自分としても、水や食料、生活用品の備蓄はとても重要だと思っています。

ただ、それだけではありません。

普段の暮らし方そのものも防災です。

例えば、

ケージ・キャリーで落ち着いて過ごせる

避難や移動、一時預かりなどで必要になる可能性があります。

首輪・ハーネス・リードを嫌がらない

突然移動しなければならない時の安全管理につながります。

身体を触らせることができる

ケガの確認や治療、保護された場合などにも役立ちます。

呼び戻しができる

万が一リードが外れたり、扉が開いたりした場合にも重要です。

「待つ」ことができる

避難場所など、普段とは違う環境での管理に役立ちます。

こうしたことは、単なる「しつけ」や「芸」ではありません。

犬猫自身が非常時を乗り越えるための力にもなります。

そして、地震が起きたその日に突然身につけられるものではありません。

日常の中で少しずつ経験させておくことが必要です。

災害時、支援は来ても「すぐ」とは限らない

今回の熊本地震でも、本当に多くの方から支援をいただきました。

行政、消防、ライフラインの復旧に携わる方々。

全国各地から来られた支援者。

ペット関係の支援団体。

本当にありがたいと思っています。

だから、自分は「誰も助けてくれない」とは思っていません。

助けは来ると思っています。

ただし、

自分が助けてほしいと思ったタイミングに、必要な量を、必要な形で届けてもらえるとは限りません。

大きな災害になるほど、支援する側も被災しています。

道路が壊れる。

通信が止まる。

水が止まる。

物流が止まる。

行政や獣医療関係者、動物関係者自身も被災者になります。

広範囲に被害が出れば、すべての場所へ同時に支援を届けることはできません。

だからこそ、

支援が届くまで、自分と自分の犬猫を守れる力を少しでも持っておく。

これも防災だと思っています。

飼い主の「かわいそう」が、犬猫の選択肢を減らしていないか

「ケージはかわいそう」

「自由にしてあげたい」

そう思う気持ちは理解できます。

もちろん犬も猫も、運動が必要です。

遊ぶことも必要です。

自由に過ごす時間も大切です。

犬らしく、猫らしく暮らすことも大切です。

ただ、

自由に暮らせることと、必要な時に安全に管理できることは、どちらか一方を選ぶ話ではありません。

両方できればいい。

普段は自由に過ごしていても、

必要な時にはケージに入れる。

キャリーで移動できる。

リードで安全に管理できる。

知らない環境でも少し待てる。

そういう犬猫に育てておく。

それは、人間の都合だけの話ではありません。

いざという時、その子自身の命を守るためでもあります。

「かわいそう」という人間側の感情だけで、

その子が将来使える選択肢を減らしてしまう。

それが本当に犬猫のためなのか。

今回の地震を経験して、改めて考えました。

東日本大震災の後から、お客様に伝えてきたこと

この考え方は、今回の熊本地震で突然始まったものではありません。

東日本大震災の後から、自分はお客様にもできる範囲で伝えてきました。

「ケージに入れるようにしておいた方がいいですよ」

「キャリーを嫌がらないようにしておきましょう」

「リードで歩けるようにしておきましょう」

「身体を触らせることも大事ですよ」

その後、自分自身も熊本地震や豪雨災害などを経験しました。

それでも今回の令和8年熊本地震で、

震度6強が観測された八代市で大きな揺れを経験し、

サロンが被災し、

断水し、

地域全体の生活が止まっていく中で、

これまで伝えてきたことの意味を、改めて自分自身が教えられた気がします。

35年以上、犬たちに関わる仕事を続けていますが、

それでも経験して初めて分かることがあります。

今回もたくさんありました。

だからこそ、経験したことをこれから少しずつ残していきたいと思います。

今日からできる犬猫の防災

すべてを一度に準備する必要はありません。

今日からできることを、一つずつでいいと思います。

例えば、

  • ケージやキャリーを普段から部屋に置いておく
  • 中でおやつや食事を与えてみる
  • ケージの中で安心して眠れるようにする
  • 首輪、ハーネス、リードに慣らしておく
  • 呼び戻しや「待つ」を日常の中で練習する
  • 身体のどこを触っても過度に嫌がらないよう少しずつ慣らす
  • 水やフード、薬などの備蓄を確認する
  • 迷子札を準備する
  • マイクロチップの登録情報を確認する
  • 家族で避難場所や避難方法を話しておく

全部できなくても構いません。

一つできるようになれば、一つ選択肢が増えます。

犬猫の防災は、何も起きていない今日から

災害が起きてからできることには限界があります。

今回、自分自身がそれを経験しました。

揺れている最中に何とかしようと思っても、身体が動かないことがあります。

建物が大丈夫でも、道路や水道など地域全体が被災することがあります。

助けが来るまで時間がかかることもあります。

だから、

災害が起きた時に頑張るのではなく、何も起きていない時に準備しておく。

水やフードを備えること。

住まいを安全にすること。

そして、

犬や猫自身にも、

ケージに入れる。

キャリーで移動できる。

リードで管理できる。

人に身体を触らせられる。

待つことができる。

そんな「できること」を少しずつ増やしておく。

人が犬猫と暮らす以上、

自由にしてあげることと同じくらい、

必要な時にその命を安全に管理できるようにしておくことも、大切な愛情のひとつではないでしょうか。

Dog Salon ぴあ〜のでは、今回の令和8年熊本地震で経験したことも踏まえながら、日常のお手入れだけではなく、犬たちがこれから先の生活をできるだけ安全に過ごせるよう、お客様と一緒に考えていきたいと思っています。

できることを、できる時に。

犬猫の防災は、災害が起きた日から始めるものではありません。

何も起きていない今日の暮らしの中から、もう始まっています。


参考にした公的資料

・気象庁「2026年7月28日 熊本県熊本地方の地震・強震観測データ」
・気象庁「気象庁震度階級関連解説表」
・国土地理院「令和8年熊本地震に伴う地殻変動(第3報)」
・環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」

Dog Salon ぴあ〜の
熊本県八代市

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この記事を書いた人

犬と猫のグルーマー、ペットライフコンサルタントとして活動しています。また、ペットをテーマにしたオリジナルイラストグッズも制作しています。

ペットそれぞれの個性やライフスタイルに合ったお手入れやアドバイスを大切にしながら、飼い主様とペットがもっと幸せになれるお手伝いをしています。

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